以前「盲導犬」「聴導犬」に関する記事をまとめましたが、世の中にはいろいろな仕事をして人を助けてくれるわんこがいます。
軍隊でもそれは同じ。
本書で取り上げられているのは、軍用犬、軍犬と呼ばれる犬たちです。
あらすじ
主人公レックスくんは、巨大な骨に目がないジャーマンシェパード。
優秀な軍用犬として、イラク戦争を戦います。
あらすじは以下の通り。
軍用犬レックスとダウリング上等兵は、米海兵隊軍用犬チームの一員としてイラク最前線、悪名高い「死の三角地帯」へ派遣された。軍用犬部隊にとってベトナム戦争以来の実戦だった。レックスの任務は兵士も市民も見境なく殺傷する簡易爆弾を嗅ぎ出すこと。最初のパトロールでレックスは爆発や銃声におびえてすくんでしまうが、リード(犬紐)の先にいつもパートナーがいることで徐々に任務をやり遂げる勇気を得る。究極の逆境に直面したヒトと犬が完全な信頼を築きあげ、数知れぬ人命を救った胸躍る物語。
『レックス 戦場をかける犬』より
レックスくんは本当に大活躍。読んでいるだけでわくわくします。
本当に「胸躍る」本、なんです。心が弾んでしまうんです。
軍用犬が直面しているもの
レックスくんは例にもれず、人に褒められることを喜ぶわんこ。
爆弾や武器を発見し、褒められて大喜びします。
コングを放ってもらってはしゃぐレックスくんの姿が、目の前のしいちゃんに重なって見えるようです。
毎日ブラッシングで毛を整え、万全の体調で働けるよう気を配ってもらうレックスくん。
我が家のしいちゃん・シェルくんのような家庭犬と同様、愛されています。
違うのはその日々に危険が伴うということ。
でもレックスくん(そしてそのパートナーである人間)は、危険な戦場に飛び込み任務を果たします。
本当に、彼らは夢中になって戦場に飛び込んでいきます。
もちろんそれは、そこに仲間がいるから。果たすべき任務があるから。守るべき人たちがいるから。
読んでいるこちらも引き込まれ、レックスくんたちの任務が成功すれば我がことのようにうれしくなります。
でもそこで行われているのは、戦争です。
思い出した本
本書でも人の死は出てきます。特別に戦争を賛美する内容でもありません。
しかし、どうしても「軍用犬そのもの」は肯定的に描かれています。
私はこれを読んで、別の本を思い出しました。
レックスくんのパートナーであるダウリング氏は志願兵。戦争に魅入られたように戦場へ向かっていきます。
それに連れられたレックスくんも同様、一緒に戦場へ向かっていくのです。
あらすじにもある通り、最初レックスくんは爆撃の音におびえます。しかしそれを「勇気」を持って「克服」していくのです。
仲間の軍用犬のうち、戦争のさなかに命を落とした犬もいます。それでもレックスくんはパートナーとともに戦場へ赴きます。
それは本当に、「リードの先にパートナーがいる」からです。
人は犬をどこへでも連れていける
たとえ犬が連れていかれることを拒んでも(爆撃の音におびえても)、人は最終的には犬をどこへでも連れていくことができます。
私がリードを持てば、しいちゃんもシェルくんもついてきます。それが人間が犬との間に築くことができる信頼関係です。
先日、仲良しの犬友達さんにお呼ばれしました。
わんこ連れでついていくとき、その方が好意でしいちゃんのリードを手に取りました。
途端にしいちゃんはおびえ、立ち上がって「嫌だ」「ママ以外の人にリードを持ってほしくない」と、全身で訴えかけてきました。
(しいちゃんが子犬のころからよくしてくださっている犬友さんで、我が家のわんこたちはその人を見つけると駆け寄っていこうとするほど大好きな方です)
そのくらい、わんこにとって「リード」というのは重要なんだと思います。
自分をどこへでも連れて行ってしまえるものだから。
ちなみにシェルくんはリードを持たれたら、「え? なんで?」っていう顔をしてこっちを振り返り振り返りしながら連れていかれました。しいちゃんがただのビビりである可能性もあります(笑)。
犬は望んでいるか?
盲導犬、聴導犬等の働く犬にも言えてしまうことかもしれません。犬の危険性を考えたとき、災害救助犬との違いは? と言われると、悩むところもあります。
はっきりとした線引きはできないものかもしれません。
でも、世の中のすべてはグラデーションで、明確な基準はないと思うので、あえて私は言います。
犬を軍事目的で使ってほしくありません。
もちろん、戦争そのものも起きてほしくありません。
戦争はあまりにも魅惑的な大きな力で、人間はそれに簡単に飲み込まれてしまいます。
自由意志の問題もまた難しいですが、人間は行くか行かないかを選ぶことが(犬よりは)できるでしょう。でも犬には、「戦争に行かない」ことを自分で選ぶことはできません。
レックスくんの活躍を読むとわくわくします。うれしくなります。
その気持ち、人間が戦争に惹かれてしまう心性は認めたうえで、私は軍用犬を使ってほしくないと思います。
皆さんもぜひ、考えてみてください。
ちなみに、軍用犬には「サイエンス・ダイエット」しか与えてはいけないことになっているそうです(本書p.62より)。こういうわんこの日々の生活が垣間見えるところが、戦場の記述よりかえってしんどくなりました…。
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